1: チリ人φ ★ 2013/02/23(土) 05:50:57.02 ID:???
親はロックを愛する子供を理解できないかもしれない。だがひょっとすると、科学者は理解できる。科学サイト
「arXiv」(アーカイブ)に2月11日に掲載された研究は、「モッシュ・ピット」を物理学で説明しようとしている。

大半の科学者にとって、ヘビーメタルとは元素周期表の下の端に位置する重金属を意味する。だが、アメリカ、
コーネル大学物性物理学科の博士課程に在籍するジェシー・シルバーバーグ(Jesse Silverberg)氏とマット・
ビアバウム(Matt Bierbaum)氏は、音楽のヘビーメタルに目を向けた。激しい音楽と、それに伴う暴力的な
ダンスが、暴動や災害時のパニックなど異常な状況を理解するカギになるかもしれないと、両氏は考えたのだ。

シルバーバーグ氏とビアバウム氏は、2年前からヘビーメタルのコンサートにおける「モッシュ」を研究してきた。
ヘビーメタル・ファンによるこの混沌としたダンスの理解を深めるために両氏が利用したのは、集団の運動と
気体の物理学的性質についての理論だ。

ヘビーメタルのコンサートに行ったことのない人のために説明すると、モッシュとは、観客が飛び跳ねながら
互いに押し合い、ぶつかり合うダンスのこと。一種の社会的儀式のようなものだ。人類学者は、統制がなく、
流動的で、ときに暴力的なこのダンスを、憑霊にたとえる。

シルバーバーグ氏とビアバウム氏は、気体を構成する粒子のモデルを適用することでも、モッシュを理解できると
話す。気体の粒子がまとまって浮いているとき、やはり互いに押し合い、ぶつかり合う。その結果、各粒子は
カオス的なパターンで飛び跳ねる。

「これと同じように興奮した状態の人間の行動がどうなるかに興味がある。だが、研究のために暴動を扇動する
ことは倫理的に問題がある」とシルバーバーグ氏は話す。

◆極限の物理学
集団でモッシュが行われるモッシュ・ピットと呼ばれる現象は、無用のケガや死亡事故を起こさずに興奮した
集団の運動を観察できる機会を与えてくれた。シルバーバーグ氏とビアバウム氏は、何時間分ものコンサートの
動画を解析し、何度もクラプに現地調査に出かけた。その結果、モッシュ・ピットに物理学的な粒子の運動
パターンが存在することを確認した。

しかも、ヘビーメタルのダンスでは2つの異なる形が区別できた。気体のパターンに従う基本的「モッシュ・ピット」
と、粒子の渦巻き運動パターンに従う「サークル・ピット」(参加者が円を描いて走りながらぶつかり合って踊る)だ。

両氏は、こうした観察に基づいて、参加者の振る舞いをシミュレートするインタラクティブなコンピューター
モデルを作った。

◆動物的本能
「群れを作る動物も非常によく似た行動を取る。自然科学者はこれを“群れ行動”と呼んでいる」とビアバウム氏は
説明する。

群れで飛ぶ鳥や群れで泳ぐ魚の場合と同じように、非常に複雑に見える行動も、集団に属する個々の個体
(たとえばモッシュの1人1人の参加者)に単純な規則を適用することで理解できる。そのため、モデル化が
可能で、コンピューターはほんの数秒で膨大な数の行動を再現できる。このようなモデルを適用すれば、
できるだけ人を踏んだりケガをさせたりしないですむ会場を設計したり、火災など災害時の群衆の反応を
あらかじめ調整したりできる。

「我々がモッシュ・ピットについて学んだ教訓で、スタジアムや映画館を改善」できるかもしれないとシルバー
バーグ氏は話す。

ただし、今回の研究に助言を与えたジェームズ・セスナ(James Sethna)教授は付け加える。学生たちがヘビー
メタルの科学に手を出したのは「安全なスタジアムを作るためではない。我々が研究を始めたのは、これが
クールだったからだ。人間の行動を(多少中毒的な行動ではあるけれども)、複雑なモデルを使わずに
説明できるかどうかを知りたいと思ったからなんだ」。

昔からのヘビーメタル・ファンであるシルバーバーグ氏は、どのバンドが最高の結果をもたらしたかを教えて
くれた。「キルスウィッチ・エンゲイジだね。いつだって観客を熱狂させる。もちろん、好みは人それぞれだ
けれども」。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20130220002

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